ナレッジ・コラム

生成AI拡張技術を用いた大量な情報の整理、意味検索を用いた調査等の効率化

Microsoft GraphRAGで総務省情報通信白書を分析

2025-01-16

はじめに

Microsoftが開発した「Microsoft GraphRAG」(以下GraphRAG)が2024年7月にGitHub※1に公開された。いろいろなところで検証記事、レビュー記事が書かれている。そこで、我々も大量データの分析、可視化の効率化への活用可能性の検証として、総務省の情報通信白書※2をGraphRAGに入力し、生成結果の検証を行った。

GraphRAG概要と検証内容

GraphRAGは、従来のRAG(Retrieval-Augmented Generation)技術※3にナレッジグラフ※4の考えを組み合わせたもので、生成AIに専門知識を適切に学習させ、拡張する技術である。

GraphRAGの主な特徴三つ

1. ナレッジグラフの活用

拡張する情報をノードとエッジで表現することで、文書中の単語の出現頻度や埋め込み次元上の文書ベクトルの類似性だけでなく、文章の意味、文脈を考慮した情報の関係性を定義でき、業務知識等の複雑な知識も生成AIで適切に扱えるようになるとされている。

2. 高精度な情報生成

従来のRAGと同じく、(GraphRAGの場合はナレッジグラフを活用し)モデル外部のデータベースを検索して得た情報を基にテキストを生成するため、より正確で文脈に沿った回答を提供する。これにより、ユーザーは信頼性の高い情報を得ることができると期待される。

3. ハルシネーション抑制

外部情報を生成AIに文脈内学習させることで、誤った情報の生成を抑制する。
ハルシネーションは、生成AIが学習していない専門知識や最新情報等を学習した情報から推定、補完し、誤った回答をする現象をいう。

今回の検証内容

当社のAzure OpenAI環境を使い、公開されている総務省の情報通信白書を2015~2024年の10年分のPDFよりテキストデータを抽出してGraphRAGに入力、学習させ、生成AIによる要約や分析等を活用し、調査業務の効率化につながるか検証する。

検証したPDF

情報通信白書平成27年PDF版本編【全体】
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/pdf/27honpen.pdf

情報通信白書平成28年PDF版本編【全体】
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/pdf/28honpen.pdf

情報通信白書平成29年PDF版本編【全体】
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/pdf/29honpen.pdf

情報通信白書平成30年PDF版本編【全体】
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/pdf/30honpen.pdf

情報通信白書令和元年PDF版本編【全体】
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/pdf/01honpen.pdf

情報通信白書令和2年PDF版本編【全体】
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r02/pdf/02honpen.pdf

情報通信白書令和3年PDF版本編【全体】
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/pdf/01honpen.pdf

情報通信白書令和4年PDF版本編【全体】
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r04/pdf/01honpen.pdf

情報通信白書令和5年PDF版全体版
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r05/pdf/00zentai.pdf

情報通信白書令和6年PDF版全体版
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/pdf/00zentai.pdf

データの準備、GraphRAG実行環境のセットアップ等

1. データ抽出と前処理

  1. データ取得
    総務省のWebサイトより対象のPDFをダウンロード取得する。
  2. テキスト抽出
    PDFからテキストデータを抽出する。今回は、PyMuPDF4LLM ※5を用いて.mdマークダウン形式でテキストデータを出力した。

    元データ:情報通信白書令和6年PDF版全体版 P.16(第Ⅰ部P.2より抜粋)

    テキスト抽出結果

  3. データクリーニング
    不要な改行や、空白、特殊文字を除去する。PDFの表やグラフのキャプション、脚注等のデータで分析のノイズとなるものを取り除く。
  4. データ構造化
    テキストを章、節、項目ごとに分類する。記載をそろえる。

    クリーニング後の例

2. GraphRAGセットアップ

  1. ダウンロードとインストール
    GitHubにあるマイクロソフトのGraphRAGをダウンロードして、Pythonの実行環境等GraphRAG実行に必要な準備をする。
  2. GraphRAG演算結果の日本語出力対応設定とプロンプトチューニングの実施
    用意した総務省の情報通信白書のテキストデータを用いて、GraphRAG作成のプロンプトをチューニングするとともに、日本語での入出力に対応させるためのコマンドを実施する。
    設定や入力データに不備がなければ、下記のような実行結果が表示される。


    以上で準備完了。

GraphRAGデータ投入

1. インデックス作成

GraphRAG構築の事前準備が完了したら、下記コマンドを入力し、Azure OpenAIのText EnbeddingとChatの機能を使い、総務省の情報通信白書の10年分のデータに対して、インデックスを作成する。

$ poetry run poe index --root ./prot_mic_itc_wp/


上記のような実施状況の進捗が表示され、当社環境では、2時間17分ほど構築に掛かり、以下のファイル、データが演算、記録された。
ファイル名:作成レコード数など
create_final_entities.parquet :[19432 rows x 8 columns]
create_final_nodes.parquet:[161784 rows x 15 columns]
create_final_communities.parquet:[4147 rows x 5 columns]
create_final_relationships.parquet:[405413 rows x 10 columns]
create_final_text_units.parquet:[5907 rows x 6 columns]
create_final_community_reports.parquet:[4147 rows x 10 columns]
create_final_documents.parquet:[10 rows x 4 columns]

2. 関係性の可視化

GraphRAGのパッケージに含まれるNode2Vecのエンベディングの機能を使い、ノード間の関係性を演算し、ナレッジグラフを作成し、可視化したものが下図である。情報通信白書10年分で全ノード(単語・テキスト)は約10万語あり、表示、可視化が難しいため、上位クラスタ3つを選択、フィルタリングし、全体の1割程度を可視化した。3つのクラスタの根幹となるワードは、「総務省」、「テレワーク」、「5G」となっており、とても情報通信白書らしい概念が抽出できたのではないかと思う。


GraphRAG構築結果の検証

1. 質問の設定

GraphRAGに学習させた情報通信白書の10年分に対して、全体の要約や指定した年代と事象等における情報が適切に検索され、適切な回答が得られるか、正確性、網羅性、妥当性を確認するため、下記の質問を作成し検証した。また、GraphRAGの質問には、グローバル検索とローカル検索の二つの手法があり、設問に応じてグローバル検索とローカル検索をそれぞれ試す。

グローバル検索
$ poetry run poe query --root ./prot_mic_itc_wp --method global --query "質問"

ローカル検索
$ poetry run poe query --root ./prot_mic_itc_wp --method local --query "質問"

グローバル検索は大まかな全体感を捉え、要約を基に回答を探索し大規模データを検索するのに向いている。ローカル検索は時期、数字、固有名詞等のある事象を掘り下げ検索できるものの、インデックスデータを一つ一つ探索するため、回答まで時間が掛かる。

  1. 10年間の変化やトレンド等の要約の質問
    1. 2015年から2024年にかけて、モバイル通信の普及率はどのように変化しましたか?
    2. 2015年から2024年にかけて、インターネットの普及率はどのように変化しましたか?
    3. 各年でICT産業のGDPへの寄与度はどう変化しましたか?
    4. 2015年から2024年までの情報通信白書で取り上げられた主要な技術トレンドをすべて列挙してください。
    5. 2015年から2024年までのICT関連政策や施策をすべて列挙してください。
    6. 各ICT関連政策や施策が何年から何年まで実施されていたかまとめて、教えてください。
    7. 各年度のICT関連政策や施策をまとめて教えてください。
    8. ICT投資額とGDP成長率の関係性を示してください。
  2. 10年間の集計、数値の推移の質問
    1. 2015年から2024年のモバイル通信の普及率の数字を教えてください。
    2. 2015年から2024年のインターネットの普及率の数字を教えてください。
    3. 2020年でICT産業のGDPへの寄与額はいくらですか?
    4. 2018年の情報通信白書で取り上げられた主要な技術トレンドを全て列挙してください。
  3. 関係性や影響を問う質問
    1. AI技術の発展が日本の労働市場に与えた影響について、情報通信白書ではどのように述べられていますか?
    2. 5Gの導入が産業界に及ぼした具体的な効果を教えてください。
    3. 情報通信白書で最も頻繁に言及された企業や国はどこですか?
    4. 情報通信白書で言及された企業、国を上位5つ挙げ、どのようなトピックで挙げられているか教えてください。
    5. 主要技術トレンド間の関係性を示すネットワーク図を作成したいです。NetworkX、Matplotlibで描画できるデータで出力してください。

2. 回答結果例および考察

上記で作成した質問に対する回答を確認し、正確に回答できているか、妥当な回答か確認したところ、質問への回答にインデックス化した学習データのIDが記載されており、AIの回答に使われていることがわかった。また、GraphRAG上に回答に該当するデータが無い場合は、無かった旨が表示された。しかしながら、要約する質問や関係性等を問う質問への回答は、部分的には合っているものの全体の要約、全体に対する回答への妥当性は、一部不十分な回答があった。例えば、10年間の普及率の変化に対する質問に対して、2015年から2020年のデータでのみ回答しており、2021年以降のデータについては考慮されていなかった。また、どの期間を基に回答しているかの記載もなかった。なお、携帯電話の普及率については、情報通信白書内で、異なるデータソースの情報があったため、両方を参照して回答しており、生成AIの回答は嘘ではないものの、使い方またはデータ学習、入力時の重みづけやソースを一つに絞る等の工夫が必要なことが分かった。
下記に検証結果の一部を記載するとともに、考察について述べる。

  1. 10年間の変化やトレンド等の要約の質問への回答の確認

    質問1:2015年から2024年にかけて、モバイル通信の普及率はどのように変化しましたか?

    グローバル検索の回答:

    ## モバイル通信の普及率の変化(2015年~2024年)
    モバイル通信の普及率は、2015年から2024年にかけて顕著な成長を示しています。この期間中、特に新興国において、モバイル通信サービスの契約数が急速に増加し、教育分野におけるデジタル化を促進する重要な要因となっています。
    ### 契約数の増加
    移動通信契約数は、固定通信契約数の約8.1倍に達し、特に新興国では教育機関がデジタルツールを導入する際の基盤を形成しています。このような状況は、教育機関がオンライン学習やデジタル教材を活用する際のインフラを提供し、学習環境の向上に寄与しています [Data: Reports (762)]。
    ### モバイルデータトラフィックの成長
    モバイルデータトラフィックは、年平均成長率53%で拡大が予想されており、教育機関におけるデジタル学習の基盤を形成しています。この成長は、特にスマートフォンやタブレットの普及によるもので、学生はいつでもどこでも学習できる環境が整いつつあります [Data: Reports (1182)]。
    ### 5G技術の影響
    5G技術の普及も、モバイル通信の普及率に大きな影響を与えると考えられています。5Gの導入により、高速通信が可能になり、オンライン教育や遠隔授業の質が向上し、より多くの学生がアクセスできるようになることが期待されています [Data: Reports (1253)]。
    ### 地域ごとの普及状況
    特にアジア太平洋地域では、固定ブロードバンドサービスと移動体通信サービスの市場が急成長しており、教育分野におけるデジタルトランスフォーメーションの推進力となっています。この地域では、通信サービスの契約数が増加しており、教育機関がデジタル技術を導入するための環境が整いつつあります [Data: Reports (2167)]。
    ### 結論
    総じて、2015年から2024年にかけてのモバイル通信の普及率は、教育分野におけるデジタル化を加速させる重要な要素となっており、今後もこの傾向は続くと予想されます。モバイル通信の普及は、教育機関が新しい技術を導入し、学生に多様な学習機会を提供するための基盤を形成するでしょう [Data: Reports (752, 2167, 1182, 1253, +more)]。

    生成AIによるインデックスや要約データを用いて回答できているものの、次の点で不完全な回答となっていることが分かった。例えば、新興国における携帯電話の契約増加は、リープフロッグ、スーパーアプリ等の要因が情報通信白書では説明されているもののAIの回答では省略されている。また、契約数の増加の回答については、2015年~2024年の指定に対して、2015年から2020年のデータのみで回答し、2021年から2024年のデータがあるのに使われておらず、完全な間違いではないものの改善の余地があることが分かった。同じように、モバイルデータトラフィックの年成長率についても、平成28年時点の2015年から2020年の推計値が使われており、2020年の移動通信における通信データ量の成長率は20.2%というデータが学習されているため、2015年から2024年に対する問の回答としては不適切なものとなっている。

    ローカル検索の回答:

    ## モバイル通信の普及率の変化(2015年~2024年)
    2015年から2024年にかけて、モバイル通信の普及率は顕著な変化を遂げています。この期間において、特にスマートフォンの普及が進み、モバイル端末全体の保有率も増加しています。
    ### スマートフォンの普及
    2015年には、スマートフォンの世帯保有率は約72.0%でしたが、2020年には86.8%に達しました。さらに、2023年には90.6%に達する見込みです。このように、スマートフォンは個人のインターネット利用において重要な役割を果たしており、特に若年層において高い利用率を示しています [Data: Sources (4331); Entities (227, 7906)]。
    ### モバイル端末全体の保有率
    モバイル端末全体の保有率も同様に増加しており、2020年には96.8%に達しました。これは、スマートフォン、タブレット、携帯電話などを含む情報通信機器のカテゴリーであり、家庭におけるデジタル化の進展を示しています [Data: Sources (4331); Entities (7906)]。
    ### 5G通信の普及
    2024年には、5G対応スマートフォンが100%になると予測されており、これによりモバイル通信の質が向上することが期待されています。また、2025年には5G回線比率がモバイル回線全体の20%を占めると予測されています [Data: Entities (9020, 13722); Relationships (13540)]。
    ### 結論
    このように、2015年から2024年にかけて、モバイル通信の普及率は着実に増加しており、特にスマートフォンの普及が顕著です。今後も5Gの普及により、モバイル通信の利用がさらに拡大することが予想されます。モバイル通信は、現代の情報通信技術の中心的存在として、経済成長や社会の変革に寄与する重要な要素となっています。

    各年のデータ、数字は適切な値が拾えているものの、2015年から2024年の変化に対して増加とのみ表現しており、何倍になったか等の比較までは、この質問の仕方では回答が得られないことが分かった。
    質問6:各ICT関連政策や施策が何年から何年まで実施されていたかまとめて、教えてください。
    グローバル検索の回答:

    ## ICT関連政策の実施期間まとめ
    以下に、各ICT関連政策や施策の実施期間をまとめます。これにより、デジタル化の進展や教育分野におけるICTの導入に関する重要な施策のタイムラインを把握することができます。
    ### 1. デジタル活用支援推進事業
    – **実施期間**: 2021年度から2025年度まで [Data: Reports (2759)].
    ### 2. 光ファイバー技術の整備
    – **実施期間**: 2021年度末に整備率99.72%達成 [Data: Reports (763)].
    ### 3. プログラミング教育の必修化
    – **実施期間**: 2020年度から [Data: Reports (1582)].
    ### 4. U-JAPAN政策
    – **実施期間**: 2004年から [Data: Reports (1307)].
    ### 5. ICTニューディール
    – **実施期間**: 2009年から2011年まで [Data: Reports (697)].
    ### 6. I-JAPAN戦略2015
    – **実施期間**: 2015年から [Data: Reports (1306)].
    ### 7. デジタル・アジェンダ2014-2017
    – **実施期間**: 2014年から2017年まで [Data: Reports (1144)].
    ### 8. COVID-19によるオンライン教育の需要増加
    – **実施期間**: 2020年から2023年まで [Data: Reports (886), (847)].
    ### 9. デジタル庁の設立
    – **実施期間**: 2021年から [Data: Reports (1283)].
    ### 10. GIGAスクール構想
    – **実施期間**: 具体的な年は示されていないが、近年の施策として位置づけられている [Data: Reports (874)].
    ### 11. デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針
    – **実施期間**: 2020年12月に閣議決定 [Data: Reports (1416)].

    下記の通り11の取り組みが抽出されたが、すべてのICT関連政策が列挙はされておらず、「日本再復興計画」、「第5期科学技術計画」、「官民データ活用推進基本法の施行」、「サイバーセキュリティ基本法の改正」、「統合イノベーション戦略」、「AI戦略」、「デジタルガバメント」、「スーパーシティ構想」、「デジタル田園都市国家構想」等が抜けていた。これらは、情報通信白書にも記載されており、学習データとしても入力済みであった。また、光ファイバー技術の整備は2022年から2028年の取り組みであるが開始年度のみ抽出されており、間違いや嘘はないもののすべてを網羅するような回答にはなっておらず、既存のAI技術と同様に質問の仕方等を工夫する必要があることが分かった。
    ローカル検索の回答:

    ## ICT関連政策の実施期間
    日本におけるICT関連政策は、さまざまな施策が策定され、実施されてきました。以下に、主要な政策とその実施期間をまとめます。
    ### 1. IT政策パッケージ-2005
    – **実施期間**: 2006年以降
    – **概要**: ITの利活用を進め、ITがもたらす問題点を克服することを目指す政策です。
    ### 2. ICT政策
    – **実施期間**: 不明(具体的な年は記載されていないが、国家的方針として継続的に実施されている)
    – **概要**: ICT産業の国際競争力を強化し、社会的問題への対応を目的とした国家的方針です。
    ### 3. ICT関連政策
    – **実施期間**: 不明(具体的な年は記載されていないが、国のICT企業の海外展開を支援するために策定)
    – **概要**: ICT企業の海外展開を支援する政策であり、その効果を評価することが重要です。
    ### 4. 戦略的行動計画2016-2020
    – **実施期間**: 2016年から2020年
    – **概要**: ICTを通じたイノベーションの推進やブロードバンドアクセスの向上を目指す政策計画です。
    ### 5. 戦略的行動計画2021-2025
    – **実施期間**: 2021年から2025年
    – **概要**: 今後5年間のICT政策の優先分野を定めた計画です。
    ### 6. 新たな情報通信技術戦略
    – **実施期間**: 2010年以降(具体的な年は記載されていないが、5年間を目途に検討)
    – **概要**: 情報通信技術の発展を促進し、デジタル社会の実現を目指す政策です。
    ### 7. 2030年頃を見据えた情報通信政策の在り方
    – **実施期間**: 2030年を見据えた方針
    – **概要**: 未来の情報通信政策に関する提言を含む政策文書です。

    これらの政策は、情報通信技術の発展を促進し、国民の生活向上を目指すために策定されています。特に、IT政策パッケージ-2005は、教育や人材育成、電子商取引など多岐にわたる分野での利活用を重視しており、ICT政策全体の基盤となっています。

    質問には、「各ICT関連政策や施策が何年から何年まで実施されていたかまとめて、教えてください。」とだけあり、ベクトル化による関係性が取り出しづらい内容であったため、“政策”、“施策”に関する直接的な記載があるものが回答として並んでしまった。質問に検索したい他の要素を追加する等の工夫が改めて必要であることがわかった。

  2. 10年間の集計、数値の推移の質問
    質問1:2015年から2024年にかけて、モバイル通信の普及率の数字を教えてください。
    グローバル検索の回答:

    I am sorry but I am unable to answer this question given the provided data.

    要約を基に、質問の回答を探索するグローバル検索では、該当の回答がない。
    ローカル検索の回答:

    ## モバイル通信の普及率の推移(2015年~2024年)
    モバイル通信の普及率は、近年急速に進展しています。特に、スマートフォンや5G技術の普及がこの傾向を加速させています。以下に、2015年から2024年にかけてのモバイル通信に関する重要なデータをまとめます。
    ### 2015年から2020年のデータ
    – **2015年**: モバイル端末全体の保有率は94.5%に達し、スマートフォンの普及も進んでいました。
    – **2016年**: モバイル端末の保有率は95.8%に上昇し、スマートフォンの利用が増加しました。
    – **2017年**: スマートフォンの世帯保有率は75.1%に達し、モバイル端末全体の保有率は94.8%でした。
    – **2018年**: スマートフォンの普及率は79.2%に上昇し、モバイル端末全体は96.1%に達しました。
    – **2019年**: スマートフォンの世帯保有率は83.4%に達し、モバイル端末全体は96.8%でした。
    – **2020年**: スマートフォンの世帯保有率は86.8%に達し、モバイル端末全体は96.8%を維持しました。
    ### 2021年から2024年の予測
    – **2021年**: スマートフォンの世帯保有率は88.6%に達し、モバイル端末全体は97.3%に上昇しました。
    – **2022年**: スマートフォンの世帯保有率は90.1%に達し、モバイル端末全体は97.5%に上昇しました。
    – **2023年**: スマートフォンの世帯保有率は90.6%に達し、モバイル端末全体は97.4%でした。
    – **2024年**: 5G対応スマートフォンが100%になると予測されています [Data: Entities (13722); Sources (4331)]。
    ### まとめ
    このように、2015年から2024年にかけて、モバイル通信の普及率は着実に上昇しており、特にスマートフォンの普及が顕著です。5G技術の導入により、今後もさらなる普及が期待されます。モバイル通信は、現代の情報通信技術の中心的な役割を果たしており、生活やビジネスにおいて不可欠な存在となっています。

    2017年から2023年までの数字は、最新の令和6年の情報通信白書の数字と一致するものの、2015年と2016年の数字は異なっていた。当該値についてデータソースを確認したところ、他の脚注のデータである総務省「通信利用動向調査」の数字を参照していることが分かった。ハルシネーションではないものの適切な回答を得るには、競合する同項目に対してどちらを活かすか、データ投入の前に事前に削除するまたは重みで調整する等の対応が必要であることが分かった。

  3. 関係性や影響を問う質問

    質問2:5Gの導入が産業界に及ぼした具体的な効果を教えてください。

    グローバル検索の回答:

    ## 5Gの導入が産業界に及ぼした具体的な効果
    5G技術の導入は、産業界において多くの具体的な効果をもたらしています。以下に、主な影響をいくつか挙げます。
    ### 1. データ通信の速度と効率の向上
    5Gの導入により、データ通信の速度が大幅に向上し、特に製造業や物流業界においてリアルタイムでのデータ分析や管理が可能となりました。これにより、業務の効率化やコスト削減が実現されることが期待されています [Data: Reports (19, 20, 56)]。
    ### 2. IoT技術の活用促進
    5Gは、IoT技術の活用を進める重要な要素となっています。リアルタイムでのデータ収集と分析が可能となることで、業務の効率化が図られ、特に製造業においては、機械の稼働状況を常時監視し、故障予測やメンテナンスの最適化が実現されています [Data: Reports (20, 56)]。
    ### 3. スマートファクトリーの実現
    5Gの導入は、スマートファクトリーの実現を加速させ、機械同士の連携やデータの共有が容易になりました。これにより、製造プロセスの最適化が進み、競争力の向上に寄与しています [Data: Reports (26, 87)]。
    ### 4. 安全性の向上
    特に建設現場において、5Gは高速なデータ通信を可能にし、リアルタイムでの情報共有や遠隔操作を実現します。これにより、作業員は現場にいなくても機械を操作できるため、作業の安全性が向上し、事故のリスクが減少します [Data: Reports (3)]。
    ### 5. デジタル変革の加速
    5Gの導入は、産業界全体におけるデジタル変革を加速させる要因となっています。企業は新たな価値を創出し、効率的な運営が可能になるため、5Gは産業界において重要な役割を果たすでしょう [Data: Reports (125)]。
    ### 結論
    以上のように、5Gの導入は産業界において多岐にわたる具体的な効果をもたらしており、特にデータ通信の効率化、IoT技術の活用、スマートファクトリーの実現、安全性の向上、そしてデジタル変革の加速が挙げられます。これらの効果は、企業の競争力を高め、持続可能な成長を実現するための重要な要素となるでしょう。

    うまくまとめてくれているものの製造業系の事例に偏っている内容となっていた。例えば、5Gの特徴として速度と効率が挙げられているが、回答に低遅延に関する記載がなく、また、スマートファクトリー以外の産業応用として、5Gによるパーソナルデータの収集や流通、スマートシティや地域活性化等も情報通信白書には記載があるため、これらも回答に盛り込まれるとより良い。
    ローカル検索の回答:

    ## 5Gの導入が産業界に及ぼした具体的な効果
    5G技術の導入は、さまざまな産業において効率化や新たな価値創出を促進しています。以下に、特に注目される産業分野における具体的な効果を示します。
    ### 1. 流通業の効率化
    流通業では、5G技術を活用することで物流の効率化が期待されています。具体的には、サプライチェーンの最適化やロボットの活用が模索されており、迅速な商品提供を目指しています。5Gは、リアルタイムでのデータ通信を可能にし、消費者の嗜好に基づいたデータを活用することで、より効率的な流通システムの構築を支援しています [Data: Entities (1645); Relationships (13584, 15336)]。
    ### 2. 建設業における作業効率の向上
    建設現場では、5G技術の導入により作業の効率化が図られています。特に、ローカル5Gの導入が進められており、建機の遠隔制御やリアルタイムのデータ通信が可能となることで、安全性や作業効率が向上しています [Data: Entities (8890); Relationships (13515, 27818)]。
    ### 3. 酪農・畜産業の高効率化
    酪農や畜産業においても、5G技術が活用されています。牛の位置把握や個体識別に5Gを利用することで、業務の効率化が進められています。この技術により、農業の高度化が期待されており、より精密な管理が可能となります [Data: Entities (8687); Relationships (13445)]。
    ### 4. スマートファクトリーの実現
    製造業では、5G技術を活用したスマートファクトリーの実現が進んでいます。5Gは、工場内の情報と公衆網の情報をつなげ、需要変動にフレキシブルに対応する生産方式を可能にします。これにより、製造プロセスの効率化や生産性の向上が期待されています [Data: Entities (8802, 9668); Relationships (15108)]。
    ### 5. 医療分野での革新
    医療分野においても、5Gは遠隔医療やリアルタイムの医療支援を実現する技術として注目されています。これにより、患者への迅速な対応が可能となり、医療サービスの質が向上することが期待されています [Data: Entities (4069); Relationships (16484)]。
    ## 結論
    5Gの導入は、流通業、建設業、酪農・畜産業、製造業、医療分野など、さまざまな産業において具体的な効果をもたらしています。これらの産業は、5G技術を活用することで、効率化や新たな価値創出を実現し、デジタル化の進展を加速させています。今後も5Gの普及が進むことで、さらなる革新が期待されます。

    ローカル検索では、スマートファクトリー以外にも流通、建設、酪農、医療と様々な産業での5Gの効果が述べられており、期待通りの回答かと思う。

GraphRAGの検証結果より

GraphRAGを用いて、調査対象のデータを学習させることにより基本的な集計や分析の仮説や切り口を探索するのに、有用なツールであることがわかった。質問に対する回答に学習データのIDが記載され、どの文献を参照したか確認することができるとともに、質問に該当するデータがなければ情報がない旨が返答されるため、ハルシネーションの問題が改善され安心して使えそうである。一方、一定期間のデータを参照して複雑な分析や考察を求めた際は、十分な回答を得られず、質問の仕方や使い方を工夫する等の現状の技術的な限界も垣間見えた。

最後に

これまで、新聞や公的データを用いた変遷の調査や大規模なデータ分析は、専門家でないとできない業務であったが、生成AIを活用することで簡易な分析が効率的にできるようになりつつある。
Xspear Consultingでは、生成AIの導入検討だけでなく、グループ会社のシンプレクスやDeepPerceptと連携し、このようなプロトタイピングや検証も実施している。
生成AIの自社内利用でお困りごとや詳細事例が知りたい等があれば、ぜひお問い合わせいただきたい。

※3
大規模言語モデルの回答精度をあげるために外部の知識源を投入する検索拡張生成の技術

※4
知識を体系的に紐づけグラフ化したデータ、またその構造や技術

Manager

角 将高

Masataka Kado

国内大手SIer、セキュリティベンチャ、外資系コンサルファーム(BIG4)を経て、2024年よりXspear Consulting参画。先進技術の研究や活用の支援、PMO等のコンサルティングサービスに従事。新規事業企画、要件定義、設計、システムセキュリティ、ポリシー策定、プロダクトマネジメント、脳科学やAIの技術実証、検証など、幅広いテーマの支援実績を有する。

角 将高

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